分析化学II (定量分析)

東邦大学名誉教授 矢島剛彦

もくじ

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IX 定量の基礎

定量分析(本講義では主に容量分析)を実施する一連の過程は、目的に適う化学反応(試験法)を選び、標準液を調整し、試料を秤量して溶解し滴定をする、である。選んだ方法が目的に適うことは厳密に評価(バリデーション)されなければならない。標準液、秤量法、滴定法なども器具を含めて厳密に規定されている。さらに、滴定で得られたデータ(測定値)には必ず誤差を伴うものであるから、その科学的(統計学的)取扱いに習熟する必要がある。なお、滴定条件を決めるに当たっての滴定誤差の許容範囲は、断りがなければ±0.1%である。

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X 水溶液の酸塩基滴定

強酸、強塩基や通常の弱酸、弱塩基は水溶液中で滴定される。滴定曲線は滴定の当量点や終点の理解に役立つ。当量点のpHは計算で求めることができるが、終点の判定には適当な変色域を持つ指示薬またはより客観的な電位差法を選ぶ。標準液は定量の拠り所であるから、その調整と標定は厳密に定められた方法に従わなければならない。各論については、測定にやや工夫を要する試料について例示した。

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XI 非水溶液中の酸塩基滴定

極めて弱い酸・塩基(K a <10 -8 )や難溶性化合物は水溶液中では滴定できないが、有機溶媒中で滴定できるものがある。溶媒としては、弱酸性試料に対しては、水より酸性度の低い塩基性溶媒、弱塩基性試料に対しては塩基性度の低い酸性溶媒が用いられる。難溶性試料に対しては、極性の低い溶媒が用いられる。終点指示法は主として電位差法である。標準液の調整と標定、定量の原理は基本的に水溶液中の酸塩基滴定と同じである。

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XII 沈殿滴定

目的物質と定量的に沈殿を生ずる化合物を標準液として用い、沈殿剤(標準液)の過量を検出する。最も代表的なものは、硝酸銀を標準液としてハロゲン類、シアンを定量するもので、銀滴定とも呼ばれる。終点検出には吸着指示薬(ファヤンス法)、鉄(III)イオン(ホルハルト法)または電位差法が用いられる。シアンの滴定(リービッヒ法)では指示薬は不要である。有機化合物中のハロゲン類も滴定可能であるが、予め無機化しておく必要がある。酸素フラスコ燃焼法においても本法が応用されている。

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XIII キレート滴定

金属イオンの定量法である。キレート試薬としてはエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(EDTA)が用いられる。EDTAは金属イオンの価数に依らず1:1のモル比で安定な錯体(キレート)を生成する。キレートは酸性で不安定になるが、塩基性側では金属イオンが水酸化物として沈殿してしまうため、キレート滴定には、金属イオン毎に下限のpHと上限のpH(至適pH範囲)が存在する。このため緩衝液が用いられる。終点検出は主として指示薬法であり、それ自身がキレート試薬である金属指示薬が用いられる。金属イオンの定量には、測定条件によって直接滴定、逆滴定または置換滴定が選ばれる。金属イオンを介する反応を利用して無機陰イオンや有機化合物を定量することもできる(間接滴定法)。

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XIV 酸化還元滴定

酸化還元滴定の標準液として用いる試薬を選択する目安は標準酸化還元電位であるが、実際には電位の強弱だけではなく、試薬としての安定性、副反応の有無、終点検出法の容易さなどを総合的に判断して選択する。終点検出法としては電位差法が多用されるが、終点の酸化還元電位を反映して変色する酸化還元指示薬、電位とは無関係であるが滴定試薬の過剰を検出する方法として、ヨウ素-デンプン反応、過マンガン酸カリウム法のように滴定液自身の変色を利用するものがある。
各論では、測定原理に、滴定条件最適化のため様々な工夫が含まれていることを理解することが重要である。

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